「土方さんの匂いがする」
笑いながらキスを落とす今日の総悟からは、

 

血の匂いがする。

 

 

距離を保っていたのに。
そう冷静に考えてしまう自分に吐き気がする。
鬼の副長が、一番隊の隊長に掘られるなんて、笑い話にもなりゃしない。
総吾の体からは血の匂いがした。
今日は番ではなかったはずだ。
ゆきずりの何かを殺してきたのだろうか。
酷く最悪なやり方で。

「ぐっ」
「集中しようよ、土方さん」

黒い前髪をぎりりと音が鳴るほど引っ張り上げると、沖田は苦しさから首をのけぞらせる土方の、その唇をべろりと舐めた。
薄く細められたその眼は綺麗な二重を縁取っている。
新撰組の中でも、若く、美しい、強い男。
なのに自分はいまだこいつを男だと認識できない。
まだ、何かをひっさげて問題を起こしてくる弟のようにしか見えない。
それに苛立ちを感じながらも必死に距離をとってきた沖田を、知っていたくせに。

その理由とか問題点とか気持ちとかを。

 

「・・・俺は丸ごと知っていて気づかねェ振りしてただけなんだ、」
低くうなるように言うと沖田が一瞬びっくりしたような顔をして、少し笑った。
「それって独り言ですかィ?それとも侘び?慰め?」
何にもなってないよ、効果がない、と沖田がくぐもった声で答える。
黒い制服の中をまさぐり、乱暴にスカーフをずらすとまたべろっと舐められた。
唇をかみ締めて耐える。
もう片方の手はすでに、自分が結構本気で守ってきた秘所に入れられている。
ぐちゅっと鳴る生々しい水音が聞こえた。耳をふさぎたい。
両手首を革のベルトでぎりぎりと縛られた、その手首が痛い。
擦れる畳と背中が痛い。
さっき無理やり擦られ射精させられたそこが痛い。

心は痛くないのに。

「・・・待て、」
「嫌だ」
沖田は縛り付けた両手首と腰をぐぐぐと抑えると、二度目の挿入を開始した。
ぬちっという気味の悪い音がして、耐え切れない圧迫感がじりじりと迫ってくる。
「ぐっ・・・ぐァ、」
「ほら、」
足首を掴み上げ浮かせるようにする。膝小僧が胸にぴたりと密着するくらいに折り曲げると、土方はぎゅっと眼をつぶった。
「すごい格好」
「・・・アアア・・・、アァッ」
最奥まで入りきると、沖田は唸る土方の顔に近づき、愛しそうに頬を手で撫でた。
それを合図にしたように、動かなくなった肉の塊になれるように土方は荒く深い息を吐く。
眼を開けられない。
頬にふれる総悟の細い髪が痛い。

何もかもが麻痺している。
この俺の上に乗っかってるのか誰だ?
総悟か?
内に入ってきているのは?
この熱い固体の正体は?

ほらまた、知らないふりをしようとしている。

「アッ・・・アッ・・・アッ・・・アアッ!」
緩く揺すり上げるように動きだした、その感覚に涙が出そうだった。
それを必死で耐えた。ガラにもない。声を抑えるよりもそれだけに集中した。
泣くな。涙は出すな。俺がここで泣いてみろ。
コイツが、俺を捨てる決心がなくなってしまう。
泣く理由なんて、無い。
無いに決まってる。

 

背中から鳥肌が立つような嫌な感触がして、いきなりずるりと沖田のものが出て行った。
「アッ・・・?」
「何処まで俺を馬鹿にするつもりですかィ、土方さん」
静かにそう言って下のほうに下がっていた沖田の顔を見逃した。ぎゅっと閉じていた眼のまぶたの裏で何か黒いものがぼやりと漂っている。
半分立ち上がっていたそれをいやらしく両手で撫でると、沖田ははぁとため息をつく。
「やめっ・・・」
「いい加減にしてくだせェ、」
ばぐり、と大口を開けてそれを飲み込まれた。
ふわーとした生暖かさに全身の神経を撫でられたようだった。ぶるりと震えれば挑戦的に吸ってくる。
「・・・・うあ、」
チカチカする。
眼が痛い。
ああもう眼を閉じるのを忘れた。
何を思っていたのか。
「あう、・・・ウウ・・・・・・ハッ、」
頭がフリーズして我慢を忘れたのだろう、簡単な単語を発して、土方はあっけなく果ててしまった。
口に出してしまった沖田に声をかけることもせず、細かく息を吐き、ただ呆然と天井を見ている。
ぐいと口元を拭ってそれを見る。その手を振り上げれば逃げられるかもしれない、それでも最悪な拒絶をこの人はしない。


それを、最低最悪な事だと知っていても、なお。

 

「アアアアアアッ」
「・・・ねぇ、土方さん」
ガチリと音がするくらいに奥まで一気に割って入った。熱い。
どろどろと溶けるようなその熱さと達したばかりのキツさに耐えながら余裕をいれずに腰を揺らす。
「ンアッ、アア、アッ」
「土方さ、ん」
何度呼んでも、返事は無かった。
ただ天井を見上げ、きつく縛られた両手首を胸に置き、
土方さんはただ喘いでいるだけだった。
その口元からは唾液が垂れている。舐めたいなぁ、と思ってぐいと腰を押し付けるように近づいて、口の端を舐めた。

ぐぐっと奥まで挿入され、大きな息を吐き、土方はびくりと大げさに震えた。
「土方さん」
「・・・ア、ゥ、・・・アアッ・・・」
「言ってみてよ」
耳元に吹きかける。
奥で細かく揺すり上げれば、頬を摺り寄せられた。
「好きな人に抱かれてると思ってよ。名前呼んで」
「アッ・・・アッ・・・あう、」
「ほら、」
太股を根元から押さえ込み、一点を執拗に攻める。
足のつま先までぶるぶると細かく震えながら土方さんは口をぱくりと開けた。
「呼べよ、」
早くも立ち上がってきたそれもさわりと撫でる。

 

 

 

 

 

「・・・・っ近藤さん・・・っ!」
もっと呼んで。
そう耳元でつぶやいて耳たぶを噛んだ。は、という短い息しかつけない土方さんの、自身も擦りあげて、そのスピードと同じようにガクガクと揺さぶった。
「もっと」
「・・アハッ、・・・近藤さん、ア、」
「もっと、」
「近藤さん、近藤さ・・・・ウ、アッ・・・アッ!」
「もっと」
「アアッ・・・近藤・・さんっ・・・近藤さん、・・・っ・・・」

腰を掴み取り、打ち鳴らす。
壊してしまえと本気で思った。俺のものを咥え込みながらただひたすらに名を呼んでいる。
この人まるごと。
近藤さん、近藤さん、近藤さん、
そう喘ぎながら、土方さんは俺の手の中に吐き出した。全身をぶるっと大きく震わせて、余韻の単語が、ぱかりとあいたままの口元から、あ、と出てきた。

肩に、頭を乗せる。
「・・・酷い、アンタは」
殺したい。
刀を覚えた。
刀を振る事を覚えた。
刀の意味を、
刀の役割と自分の仕事を覚えた。
なんだってできると思えた。この人を手に入れる為なら。
でも。それでも。

「どうして殺させてくれないの?」
みっともない。泣いてしまった。
全部あんたが悪いんだ。

 

 

 

 

 

「この世で唯一、殺せない人間を、

あんたが選ぶなんて」

 

 

 

 

 

近藤さん、堂々巡りだ。
そう呟くと、微かに肩が動いた。
かっこ悪いけど涙をがりがり拭いながら顔を上げると、
土方さんの眼からなんか透明なものが流れ出ているところだった。
疲れきった様子で、ただ水分を垂れ流している。
睫が濡れていた。
どうにかして慰めようと、俺は一度鼻をすすって、
頬をできるだけ大きく包み込んでキスした。
すぐに絡んでくる熱い舌。

 

歪んだ一方通行も愛と呼べるなら、
俺達二人は愛し合ってるんだろう。
ねっとりと甘い感触に眼を細めるとん、と鼻から透るような声で土方さんが鳴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


・・・ご め ん な さ い・・・!
なんだろうこれ。いつから私はそんな暗い系ばっかり書いてるんだ・・・?

最近メモで『沖土はエロなしでも、雰囲気ややりとりだけでも萌える!』なんて言ってたくせに・・・
・・・またしてもエロ。そしてまたしても土方さんを無理やりやってるよこのサドでなんぼです王子は!

コノヤロー!!!(いやお前がな、)

おかしい・・・こんなに暗いはずじゃなかったのに・・・

おきたがにんむからかえってきてだーくなきぶんでひじかたさんをむりやりやっちゃってでもあいしてるんです、的内容だったのに・・・!(結局無理やりやってんじゃん)


なんかもうすっかりシリアス沖土にはまったたけこです、こんにちは。
あれですかね・・・近藤さん、ってエッチの最中に叫んでしまう、そんあ土方さんを書きたかったんですかね・・・いや、聞くなって話ですよね・・・

土方さんはすっごい奥底で近藤さんに惚れてるといいなぁ・・・それを沖田しか知らないんです。しかも沖田がなぜ知ってるかというと、ただの勘なんです、野生の(・・・)

沖田は土方さんを得る為なら誰でも殺せるくらい愛しているといい。でも、近藤さんは絶対に殺せないんです。
土方さんになんで自分じゃ駄目なのと思っていても、結局自分も自分で、近藤さんは殺せない。

そんな葛藤があればいいです・・・なんかもう本当すいません。
そんな感じで沖土熱は下がりそうにないです。
暗い系・・・なんだけど・・・それもすきなの・・・!(本音!)

 

05/1/14