「何処まで行けばいいんだ高杉」
銀の男が、ちらりとかすめるように唇をずらして言う。
ぱらぱらと風になびいて遠くへ飛べない包帯が俺の顔にはりつく。
汚い何かが覆った視界にそれは判断しにくくとも、
後ろからついてくる気配が消えない
一生消えない痕、この目よりも不自由さよりも何よりも。
じっとりと汗がにじみ出てきてそれをぐいと乱暴に拭う男の腕も見えず
そのがしりとした無骨な形を思い出してあぜんとする。
そのまま上を見上げてじっとしていると
「ん?」
と聞いてきた。
もう一度、舐めて欲しいと言わずに掴んでいた手をぎゅうと握る。
見えないけどぐいとひっぱる。
固く握った手を解かされない事にとてもとても安心してるから
真っ暗な地面と目の前に踏み出せる。
この男の手が俺と同じようにじっとりと汗をかいていて
それで気持ち悪いけど安心するのだ。
血まみれの。
袖に跳ねた血潮の塊と、黒い痕、立ち込めるにおいと味。
気味の悪い感覚と手に残る人をあやめた俺の力加減。
「何処まで行くんだ高杉」
もう一度聞こえるその音色にうっとりしながら目指す黒。
後ろからついてくるみなの足音。
ざりざりと擦れる砂の匂い。
ここに何か光があるなら信じよう。慰めよう。助けよう。復活しようと心に誓おう。
そんなもの俺にはとうの昔に見当たらない。
かすめる鈍い色は銀を発色させるばかりだ馬鹿馬鹿しくて、それでも歩いた。
許される我侭をたまには利用してもいいじゃないか。
高杉は銀さんに甘えるのが得意ですが、坂本とヅラに甘えるのは不得意。
というわけで、後からついてきてくれる二人を期待して勝手に歩いていっちゃう高杉くんでした。
・・・05/3/23 やっと出たァァァ!