ざらーりざらり 音がする

こっちに来れば救われる 手招きするのは白い首 

こっちに来れば救われる

ざーらりざらり 音がする

石を投げて渡ろうか

どらほれ 座布団敷かれてる

前に座ったあの人の

ほのかなぬくもり残ってる

ほらほら 後は この席に

自分が座れば上出来だ

そのヤニどけて マヨどけて

今日から俺が副長だ

 

 

「ちょっ、総吾、何やってんのォォ?!おまっ 何やってんのォォ?」

「うるさいなぁ土方さん 何ですかィ大声出して」

ここは新撰組の屯所。泣く子も黙る鬼の副長が室として使っている部屋。

上等な漆塗りの座イス、紺色の座布団の上。

沖田はすっかり湯を浴びて湯気を立てている土方の大声をいさめた。

わざと大きく崩した座り方で目を細めると、横に携えていた刀を握り締めながら答える。

「実はあれですぜィ、先ほど新撰組一日副長に任命されまして、まずは忌々しいヤニマヨ前副長の脱却からお頼みしようと思いましてねィ、」

「ざけんなァァ!こちとら明日はお前と違って朝出勤なんだよオラ!」

「ふっ 何だいトシ、今日は嫌にピリピリしてるじゃないかィ、副長に話してみろってんだ 俺ァ前副長とは違って優しいんだぜィ」
ぶつん、と何かが切れた音がした。

「てめっ 総吾オメ」

「はいはいはいストーップ」

大声で怒鳴ろうと息を吸い込んだ土方に手をずずいと突き出し、沖田は軽い身のこなしでさっと座布団から退く。
そして真っ直ぐ土方の顔を、見ないようにして刀を携えた。
「やっぱり副長なんて座は堅っ苦しくていけねぇや」
そう言ってやっとこちらを向く。

沖田は時折掴めない行動をとることがある。それは近藤さんや自分のように常日頃から一緒にいて、幼い頃からのコイツの性格をきちんと把握している人にしかわからない。他の隊士達にしてみれば、「そんなのいつもの事じゃないですかァァ!」などと叫んでいるだろう。そうとくに、山崎なんかは。

今日の沖田は少しだけそういう雰囲気だった。何か空気が違う色をして漂っている。そんな気がする。
自分もそれはただの自己判断であって、それを本人に確かめた事もない。確かめたらなんだかコイツがひどく傷ついた顔をしてしまいそうだからだ。そしてそれも結局全て丸ごと土方の考える内の事で、ついぞ何も本当の事は分からない。
なんだかいつもと違うかもしれない。
同じかもしれない。
その事を言ったらコイツは、変な顔をするかもしれない。

ジジジとどこかで虫が鳴った。

「・・・あなたに仕える事で救われるものなら、」
いつになくからりと軽い声で言う。
「俺の手は挙がらなくなったり白く凍えたり土についたり土に埋められたりしないのに」
夜に途方に暮れてそれを必死に隠すような眼が消えて、
俺はゆーっくり手を伸ばした。

 

 

「・・・近藤さんを呼んできてくれ、」
襖の向こう側で声を潜めていた山崎にそう伝えると、は、といういつになく硬い声で返事があった。
引き寄せると、総悟はやっと泣いた。
痛みの無い細い髪に手を透き入れても、
電柱の明かりから動かない総悟を連れ戻す術を俺は知らない。
もうお前はここに必要でいてもいいんだぞって言葉はうさんくさくて言えない。
だからその単語がもっとも似合うあの馬鹿を待ちながら
そしてそれを総悟も理解していると俺も気づきながら

 

あの人がいなかったらいなくなったら俺らどうなるだろう、
明るく温かい部屋の中からじゃ
あの電柱の下は恐ろしく寒く暗く見える。
近藤さん来るから、もう休めと言いたかったけど
近藤さん来るから、で途切れてしまって
まるで俺もそれを信じてすがって途方に暮れているようで、身震いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



・・・明るい話の予定がなぜこんな暗くなるんですか?!

意味わかりません・・・(自分が)

あれです。沖田は少し精神的に不安定になってしまったという事で。

今の沖田じゃなくって精神的にちょっと抱えてしまった沖田って事で(ここで説明すんな!)

 

あとお前はネッ禁してたんじゃないんですか?

この話は落ちる前に半分出来上がっていたものなので許してください(土下座)

メルフォでね・・・『小説が好きです』って言われて浮かれて嬉しくってどうしようもないんですよこの子。

2/5