ぐったりと眠る土方さんの髪をさわりながら横になる。
終わりを覚悟していたけれど、それならばいっその事、そのときくらいは意識のある時に迎えたい。
この人は変な人だ、と沖田は考えた。
黒い制服を身にまとった鬼の副長。

自分達に光のある足跡など残る事はない。
それでも刀を失わない為に残る道はそれだけだった。
誰も悔やまない。誰もがあの人を信じて慕って惹かれて、
皆心で思っていた。

この方と共に。

この方と共に。

 

近藤さんが持つ刀の手助けを出来るならばと俺達はいつも思う。
土方さんも思っている。
けれど土方さんはその後、自分の後ろよりも俺達の後ろを気にしていた。
どうにか何か、残るものがあるように、と。
自分の後ろの黒い足跡を見つめ。
それでもなおこの人は思案していた。

馬鹿な人だ。近藤さんにも気づかれないように。
何を背負おうとしているのか。
黒い髪が流れ横を流すように視線が思案する。
その度に俺は思っていたよ。
俺だけは気がついている
この汚れた時代の黒い物を押し付けられている部下の後ろを気にするあんたの、
その笑えるくらいに馬鹿な性格を。

 

 

 

真紅の刀紐を外そうか考えて、やめた。
解いたその痣を確認する土方さんを見ていたいと思ったから。
汗をかいたままの頬を撫でたりしてみる。
ああどうしてこうなったんだろうな。
あぁ。

土方さんの為なら生きれると思っていた。
あんたの右腕になんてなる気はさらさら無かったから、せめて一番役に立つように思っていたんだ。
それがこのザマだ、
あんたの為に死ねると思ってる。
こんなはずじゃなかったのに。
終いにはあんたの刀で死にたいと思っている。最悪。なんだろうこれ。

 

 

 

 

「・・・・・・おはようございます」

ばらりと横に流れる黒髪越しに、うつつと開きかけていた眼が一気にばちっと開いた。
あ、起きたと冷静に考える自分が最強に大嫌いだ。
もうこんな考えをしてしまっている以上、もう終わらせてしまいたい。
だからさっさと紐を解いた。制服の上から縛ったその刀紐。
新撰組を結成した時に近藤さんが買ってくれたもの。
そんな風に甘やかすからと土方さんは言っていた。近藤さんは自分以上に嬉しそうににこにこしていた。
その夜、土方さんは俺を自分の部屋に呼んで、
その部屋には近藤さんがいて、
俺が見ている前で近藤さんが土方さんの髪を切った。

男の鬱陶しい黒髪を、
もったいないと感じたのは生まれて初めてだった。

 

横に寝ていた土方さんを起こし紐を解く。一気に解いて制服の袖を捲り上げてみた。
男にしては白いその手首より少し下のあたりに、赤い痕がある。
痣になんてなってくれない小さなものだ。一日ですぐなくなる。夜湯を浴びたあとにはすっかり消えているだろう。
馬鹿らしい。

「何だ、痕なんて、残らないもんですね」

・・・声が

 

 

震えなくてよかったー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・斬りますか、」

土方さんは俺に目線を合わせぬままふらりと立ち上がり、真っ直ぐ刀のところへ行き、
そして俺の喉もとに刀を当てた。
綺麗な直刃。
たくさんの血が染み付いた重い刀。
きっと土方さんは、俺を斬った後はこの刀、使わずに取っておいてくれるよね。
そういう人だ。

「土方さん」

おっと。待てよ。

何言い出すんだ俺。

あ、でも。

 

 

 

 

 

ごめん土方さん。

「もうあんたの刀で死ねるなら、」

 

 

 

 

 

 

止まらねぇや。

 

 

 

 

 

「それもいいかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直、ここで蹴りを入れられるとは思ってなかったから、ものすごい咳き込んでしまった。
土方さんは刀の柄をぎゅっと握り締める。

「俺は男だ」
声が低い。この人の声は低い。それでも別段にすこぶる低くなる時がある。
その区別を簡単につけられる自分が馬鹿のようだ。
土方さんは咳き込んで下を向いたままの自分の上から言葉を続けた。

「男の俺はそういった機能はついてねぇ、」
そう言った後に沈黙が折りる。
俺は顔をやっと上げて土方さんを見た。土方さんは殺気のようなものを放ちながら、真っ直ぐ俺を見下ろしている。
「そうですね」
長い沈黙で俺の番か、と考え返事を返した。
「そんな俺に近づいてくる大馬鹿野郎がいたら俺は即効でぶった斬ってる」
沈黙。
「土方さんならそうしまさァ、」
返事を返す。
二人とも眼を全然そらさないままだった。
長い切れ長の眼。

「そんな俺の穴に突っ込んで、」
黒い髪。
「あんあん言わしている輩は誰だ、」

 

「・・・俺でさァ、」
土方さんの眼が見える。
声が聞こえる。って事は、あれ。

 

 

 

俺生きてる。



「男の俺に気持ち悪い事して何回も何回もそうやってそれでもお天道様の下でのうのうと今も元気に生きている大馬鹿野郎は誰だ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・俺でさァ」

 

 

 

 

言葉を上手く飲み込めないまま返したら、土方さんの手がすっと動いた。
ごつりとした手首が動き刀を滑らす。俺の前髪をすっと人束つまんだ。
眼が乾くくらいに土方さんを見つめる。
土方さん。
土方さん。
土方さん。

そのままそれをすっと切り落とすと、土方さんは言った。
「次は殺す」

 

 

 

 

 

 

 

「ってめ、殺す気か刀!刀危ねぇだろ」
「土方さん、」

がばっと足に飛びついて押し倒した。何だかいたたまれなくなって髪にふれた。
体温を感じたくて滅茶苦茶に頬を押し付けて舐めた。
だから、そのままキスした。
頬から摺り寄せてキスする。べろっと唇を舐めてちゅっと鳴らす。
カラリと乾いた金属音が鳴って、

首からするりと体温がのぼってきた。
そのまま髪をすかれる。
頭がぼーっとしてくる。うわ、やばい。生きてる。土方さん生きてる。俺も生きてる。
甘いキスだった。時折抜けた息と一緒に手が移動して、耳の後ろの髪を擦られた。気持ちいいなぁ。

 

 

「・・・てめ、調子に乗んなオラ、」
「今日はいちゃいちゃし放題の日」
「どけ!今日は朝から城の護衛だろうがァ!!」
「まだまだ、ストロベリートークの途中ですぜィ」
「さーて刀の斬れ味が最近微妙なんだっけ 総吾君試しに斬られてくれないかな?ア?」

 

しつこい俺を蹴りでどかして、土方さんは起き上がった。
俺はそれを見ていた。
刀をしゃんと鞘に戻し、ジャケットの胸のあたりを探る。
「おめー制服洗濯しろ いやむしろ買い取れ」
そうして慣れた手つきで火をつける。

 

そのまま、
白い灰を一つだけ吐き出すと、そのまま部屋を出て行ってしまった。

 

 

 

 

「・・・近藤さんなら斬らないでしょうに、」
そう吐き出した言葉の重みが違いすぎる。顔が上手く表情を作れない。ああやばい。今日一日はあの人と絶対二人きりにはなれない。今もまだあの人の手の体温が、首もとに残っている。
きっと、どこかれ構わずいただいてしまう。

 

 

生きている事が愛の証。なんて危険な賭けと対。
それもあの人ならやりかねない。
あの人なら悪くない。
土方さんなら。

 

 

 

 

 

・・・媚薬ルートを解明すべく三日の張り込みを命じられた時はさすがに、後悔の一つでもしたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵・ぎんこさま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

・・・キスの時に沖田の首に手を回す土方さんを書きたかっただけなんだ。
なんでこんなに暗・・・もごもごもご。

とりあえず完結です。なんだろうこれ。最後は無理がありすぎます。
土方さんにとってあれですよ、沖田とかは一番気にかける存在なんじゃないかな、と。
近藤さんの後ろを歩いていく土方さんは、自分が犠牲になることをまったく気にかけない人だと思います。
それが自分の立場や役割だと思っていそう。
けれど自分の後ろの部下達にはそういった道を選んで欲しくないと思って気にかけていそうです。
特に沖田のような年の若い部下達には。

それを沖田隊長は気がついている・・・そして、「土方さんの為になら生きれる」と思う。
それが色々なコンプレックスとかヤキモチとかジェラシーとか(ジェラシーって・・・)で
「土方さんの刀で死にたい」と思ってしまうわけです。

説明NAGAIね〜!

私の妄想内の沖土はこんな感じです。
沖田は攻めでバイオレンスでサドでも、精神的には弱いというのが私の萌え要素なんです。
お付き合いありがとうございましたー!

(05/1/9)

 


(05/2/8 追記)

すいません、図々しくも挿絵・・・のせちゃった・・・
だってこれ・・・どうしよう・・・ぶるぶる。

ぎんこさんが私のこのバイオレンス沖土に萌えてくださって、この絵・・・
私の想像出来うる対の沖土像を遥かに超えたこの絵。萌えすぎます。
すいません本当すいません小説にも飾ってしまってだってどうしようもなかった。

ぎんこさん本当にありがとうございました・・・!私は幸せです。