ぐっと顔が近づいてきて、あ、と思ったんだけど、ゆっくりと、避ける理由が無いそれは微妙にぼやけて
細めた目を閉じるタイミングをなくした。
今まで肩に置かれていた手が所在なさげに襟元を掴んでるけど、暖かなやわらかい感覚のせいでよくは感知できない。
（うわ、うわ）
ふれて、ちょっと固まって、結局まだ目を閉じてなかったけど、なんかあちら側も細めただけで閉じてなくて、まだこちらをぼうっと見ている。
その目がぼんやりしていて半分閉じた瞼が妙に焦る。
どうしよう、と息を止めている間にゆっくりと角度が移動していって、あー、と思っているとあちらの目がそれに合わせて閉じられた。
睫が。そのそばにぎゅっと寄せられたしわのふちが赤くて
自分の心臓が跳ねる。
ただふれてるだけだったのは角度を変えても同じだったのだけど、
俺も息を止める事しか知らなくて、手はぶらりと下げたままで、
どうすればいいのか分からなかった。心臓の音がうるさくて、ふれられてもいないのに頬が熱い。恥ずかしさと得体の知れない何かで頭が発熱してそのくせ思考は全然落ち着いていないくせに静かだった。
ここは俺の家で、時刻は夕方で、
別に急ぐ必要も何もないくせに俺達は妙によそよそしくて慌てていて、
でもそのくせ初めてで俺は女ともまともにしたことなんてなくて（本当のところは知らないけど多分）こいつだってそうで、だからお互いがお互いに意識してそわそわしていたのはなんとなく分かってたし微妙だったんだけど、初めてなんだけど驚くほどそんな感じじゃなかった、
ここでしといた方がいいんんじゃねっていう雰囲気で近づいた唇はそんな事すっかり忘れるくらい
飛ばしてしまうくらい現実的に温かくて焦った。
でも立ちっぱなしで俺は両手ぶらさげて突っ立って
そんな俺の襟元に手しがみつかせて顔だけ近づけてるこいつと俺って結構間抜けというか
初々しいのかもしれないけど、
また角度が変わって質感の違う何かでぺろって上唇を舐められて
またうわと思って我慢できなかった息を細く吐き出す時にするっと自然に舌が入って来た。
本当は息もきつくて（どんな風に息継ぎすればいいのかなんて知らなかったから）まさか舌まで今かよって思ったんだけどそんな気持ちと反対で心臓だけがばくばくうるさいくらいで逆に頭が熱くて平たくて冷たい、
本当は一杯一杯だったけど相手もそうなんだろうけど、
必死で息を吐いたり吸ったりしながら自然に口を開けたら、今度は確実に自分の中に入って来た。
（・・・うわ、）
温い。少しざらりとしたようないいんだか悪いんだか知らない初めての感覚を少しだけ擦り付けられて肩が一瞬上がった。
もう目をいつ閉じたか分からないけど、もう絶対開けられないと思いながら、相手の手が掴んでいた襟を少し慌てたように離して同じように慌てたようにゆっくりなんだけど的確な力で頭に添えて引き寄せてきて
俺はそのまま抵抗しないから近づく距離をまた角度を変えて縮めた。最初は少しだけ擦り付けるだけだったのに、時折熱い息をのせて絡めるように、ゆっくりなんだけど結構大胆に舌が動いてきて、
息を少し吐き出したいだけなのに、お互いはっはっはって荒くなっている。
顔は見えないけどきっと変な顔してるんだろうと平たい熱をもった冷たい頭で思う。
汗がじんわり出てくるのが分かる。本当はセーターにふれる外気は冷たいくらいなのに体だけが異様に熱い。それは相手も同じなんだろう。
ぬるぬるしてるんだけど気持ちよくて初めてのくせに舌まで入れてすごい長い時間だったけど、結局相手の手は頭に添えられたまま動かずに固まって
俺はいつのまにかその目の前のセーターをぎゅっと握って必死で顔を上げて口を開けてた。
不恰好すぎる、なんだこれ。初めてのチューがこれかよ。
二人して初めてなのに必死で舌入れて擦り付けて息吐いて。
吸ったり出来ないから唾液は垂れてるんだろうけど、分からなかった。
それぐらい、舌と舌を擦り付けるのに夢中になってた。俺も、相手も。
最後にちゅって大きく音が鳴ってやっと唇が離れた。
二人とも汗かいてて唇は濡れてて息は荒くて、ぼんやりしてた。まるで自分が感じた感覚じゃないみたいだ。でも、本物は目の前にいる。
じんと強い余韻も気持ちいい気がして目をゆっくり開けたら、
むこうもとてもぼんやりした目でこちらを見てて、また近づいたと思ったら引き寄せられて、ぎゅうと弱い力で抱きしめられた。
まだわずかにはーはーとする息で耳元で獄寺、って呼ばれてそれも気持ちいい。
山本武とキスした。
05/3/8
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お互い初めてで何もわからなくてでも必死なべろちゅーとか、問答無用に萌える。
も・・・もっとキスを色っぽく書けるようになりたい・・・無駄に長いなーこれ・・・