挿れた後、山本の息が大きく一つ出るまでに、俺は浅い息をふっふっふと三回吐き出した。
「うう・・・・・っ」
まだ山本は動いてないけど熱くて気持ちがいい。シーツの波を掴めずに背中を少しのけぞらせる。
後頭部をベッドに押し付けるようにして力を分散させようとしてもうまくいかない、もう少ししたら、声が漏れてしまう。
「・・・あちー、」
「あっ」
山本は俺にもう少しぐっと近づいて首筋に顔をうめただけ、なんだけどやっぱり声が一つこぼれてしまった。
薄い肌をかすめるように舌がいたずらして、ちゅっと吸い付く。
「・・・獄寺、」
耳の裏から息を吹き込むように呼ばれて、ゾクっとした快感が通る。開いた足からわき腹を通って、のけぞらせた首筋を抜けて、頭のてっぺんまで一瞬だ。
コイツの声は時々本当に快感すぎて、それこそ、本当に絶対一生言わないが、下手するとそのままイッてしまいそうになるくらい気持ちいい。
鳥肌が立つとは違う、ビクッと反応した神経の筋を抜けて、擦れた音とその低さと息の暖かさに芯が熱くなる。
ひゅっと吸い込んだ息とそれを合図にして山本が動きだして、まだ首元にある山本の体に必死でしがみつくようにすればそこは首のあたりで黒い髪があたった。

山本の髪の匂いがする。

 

 

 

 

山本は男で、俺も男だ。でも山本はモテる。クラスの女子に。先輩に。そのまたもう一つ上の先輩に。
でも山本は、自分と付き合っている。
もう自分も分かりきっているから、今更「どうして付き合ってるか分からない」なんて事は言わないが、まだまだ隠し通す事ばかりのほうが断然多い。男に生まれた時点でもう無理だが、獄寺がもし女なら、もしももしもで女ならば、
山本武という男にはたして惚れただろうか、とたまに考えたりもした。

 

山本とは学校でもこうしたお互いの家でも一緒だけど、こんなに近づいているのはセックスとかキスとかの時だけで。
他人とこんなにも近くに寄ることなんてそういうときくらいだと思うたび、獄寺は変な感じにとらわれる。

 

山本の短い髪がさわやかで好きだ、とクラスの女子が話していた。野球って感じがしてとても似合っているのだと。
でもそのクラスの女子どもは山本の勇姿に声援を堂々と送れても、山本の髪の匂いは知らないんだろう。少し汗で濡れていたり冬の風でわさわさとなびいていたり、湿った雨の匂いがしたり温かいぬるい匂いがしたり。
生き物の、本物の山本の匂い。揺さぶられてゆれて、何も考えられなくなっておもわず顔をうずめてすりつける温度。

 

 

 

他校の生徒も手紙で思いを打ち明けた人もファンクラブと名乗る連中も、取り巻きの女どもも全部。
もしかしたら十代目すらも知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・俺だけの特権、)

考えに気をとられているからか抑えられない声は放っておいて、目の前にある髪に頬をすりあてて、匂いを吸い込む。
脳に直接響け、と思いながら、山本と一度だけ呼んでやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

05/3/30

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髪のお題は絶対獄寺のさらさらヘアーだぜ!と思ってたくせにもっさんってハマるとこわい

山獄が頭の中でずっとにゃんにゃんしてます