獄寺にしっぽと耳が生えたらすっげかわいいのにな。

 

 

 

と、いきなり言われたので、獄寺はあー?!と不機嫌な声を出しておいて、
・・・いや待て待て、とまるでコントのように今の言葉を頭で立て直してみようとした。
その間にも放って置かれて少しふてくされていた山本は、やっとこちらに向きかけた意識を夢中でたぐりよせるように
だからー獄寺にしっぽと耳が生えたらすっげかわいいのに、ともう一度言った。

 

少し暑い山本の部屋は古い扇風機だけが唯一の清涼器具で、足を組んで重なり合った部分とベッドに持たせかけたシャツ越しの背中は少し汗がにじんでいる。もう夕方なのだから、あと少し我慢すれば涼しい夜だ。
でも何が一番あれなのかって、わざわざそのあと少しの時間を、クーラー付きの涼しい我が城で過ごさずにこうした蒸し暑い小さな部屋で過ごしていることだ。別に雑誌なんて、借りて家で読んで明日の朝一番に返せばいいのに。
山本はジャンケンで負けて、もう見たくもなくなるような暑苦しいごちゃごちゃのベッドの上、獄寺のすぐ真後ろに座っていたはずが、ぐたりとうつぶせに潰れていた。扇風機は一つしかないし首を回すと風の当たる時間がものすごく減るので、いつもジャンケンで勝ったほうが(ベッドよりは)涼しい床に座り、その後ろの暑苦しいベッドに敗者がのぼって大人しく風を受けた。

 

 

「・・・お前、とうとう頭イカレたか」
「え、本気」
うつぶせに寝転がり目を閉じた山本は、さらりと言い切ってうー、とうなった。短い前髪からのぞく額に汗が張り付いている。さすがの野球部もこの暑さにはまいっているようだ。思考回路が少しショートしたらしい。・・・それにしても暑い。その額と閉じられた瞼を見て一瞬ひやりとして、すぐに雑誌に視線を戻した。
「だってお前、きゃんきゃん噛み付いてくるし、かわいいし、絶対似合うって・・・」
「ざけんなお前の悪趣味に付き合う気はねぇよ」
「手足細いしさー・・・あー劇とかであったら俺絶対獄寺に一票入れるから。頑張れ獄寺・・・なんか狼とか、きつねとかもいいなー・・・」
「うるせー暑いならもうしゃべんなよ・・・」
本気で暑そうな声でまた暑苦しい妄想してんな、と雑誌の文字を追いながら思った。こいつほんと悪趣味だよな・・・そう考えている思考もどろどろしていて、もう雑誌の内容も山本の言った内容もぼんやりとした頭ではうまく取り込めない。
本当に暑すぎる。なんだろうこの部屋は。

 

「とりあえずシュミとかそういう問題じゃねぇな」
「そういうのって多いじゃん、プレイとかさー・・・ビデオとかでもよくあるし・・・男の性だって・・・」
「なんでも男の性かよそういう奴は悪趣味なんだよ」
「んだよごくでらー、悪趣味悪趣味言い過ぎだって・・・アリだよそういうの・・・似合うのに・・・」
「似合うとか似合わないとかじゃねぇって。そういうことしてみてーって思う事が少しあれなんじゃねーの」
「ちっげーよ、男のロマンだよ、」
もう頭に入ってこない雑誌を放り投げて後ろのベッドのほうに向きなおると、山本はまだ目を閉じたままでぼつりとつぶやく。
「好きな奴にはちょっとくらい思ったっていいじゃんかー・・・」

 

 

 

まだ閉じられた瞼に、自分も無意識に目を細めた。
じわーっと溶け出すようなぬるい温度の空気と、山本の黒い前髪を湿らす汗が光って、少し変な気持ちになる。今日はめずらしく疲れているからか、なかなか手を出してこないので目を開けてほしいと思った。扇風機で送られてくる風もぬるくて、肌とぶつかっても気持ちよくもなんともない。
獄寺がこっちを向いたのに気が付いて、やっと山本が目を開けた。ばんざいの格好で暑さに降参!状態の腕で、口元が隠れていて見えない。ゆっくり開けられた目でじぃっと見られて、獄寺も簡単には視線を外せなくなってしまった。すっとした目で見つめられているのに、暑さのせいで頭がまだぼんやりとやわらかくて・・・

まるで酔っているみたいだった。


「・・・やっぱ似合う。すっげ似合うと思うぜ獄寺に耳、としっぽ」
熱がこもり始めているその声で言われて、何も言えなくなってしまう。そのかわりに頭の片隅でちらりと、黒い尾と丸っこい小さな耳が飛び出してきて、目の前のぐうたれた山本にひっついた。
口と、鼻の途中まで白いシャツの肩に押し付けてじっとこちらを見る山本。額に残っている汗とか、気持ち持ち上げられた足首とか。

 

 

 

「・・・ごめん獄寺今日はしないつもりだったけど、」
山本がしなやかに足を折り曲げて、手を上手に使ってベッドに上体を起こした。四つんばいになって近づいてくる、その目がきらりと光っている。自分の目はきっととろとろに溶けていて、山本からすれば誘っているように見えるんだろう。待ちきれなくて膝を立てて、手を伸ばした。自分と別の体温に触れると余計に暑くて汗が背中を流れる。

回した手でさすって、背中の骨を確かめた。むらっとしたのは相手にバレてしまっただろうけど、山本も黒い犬なら似合うんじゃねーの、と想像して起ってしまったというのは一生言えない。そう思いながら声を出した。自分のじゃないような甘い声が部屋に一瞬で溶けて、また温度が上がった気がする。山本が興奮しているのがわかって安心した。これなら安心だ、山本が俺を抱くんだろう。

 

 

 

 

自分だけがむらっとした瞬間は、勢いあまって。
なかなか手を出さない山本をひっぺがして、立場逆転。俺が山本をいただいてしまいそうになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暑い夏の日はとくに、ご用心。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

05/6/2

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これ後半部分かなり変えたんです。だってそのままいっちゃうと
本当にごくやま本番に突入しそうだったんです
いつかごくやまバージョン日記にでも置いておきます・・・
この二人はにゃんにゃんしてればいいですよほんと。

皆様がねこみみとかきつねとかけものとかで萌えるので自分も頑張ってみたら玉砕系。笑えない。