最初に、両手を縛った。
抵抗の力は凄かったが、息が上がるのも熱が高まるのも早かった。何を焦っているのか、分厚い制服の袖の上から自分の予備用の刀の蔦紐をつかって縛った。顔を近づけた時に触れた黒い髪からはあの煙草の微かな香りがする。
もう一度はこの距離でその香りが感じられた、そう遠くの意識の底で思う自分がいた。
「てめぇ離せ・・・っ」
「土方さん」
縛りつけたままの格好でそのまま後ろから手を伸ばす。
「土方さんって制服でヤルの嫌がりますよねィ、」
ぐいと腰を押し付けて前に手を回した。
逃がさぬまま触れただけでもびくりと跳ねる体を一層引き寄せる。
「真選組の黒制服。さすが副長。よく似合ってまさァ」
一度やってみたかった、と沖田は考える。黒い制服。かっちりとした着方を決して崩さないこの人の首筋のラインがすごく綺麗な事を知ってる。
最中の神秘的とも言えるような、不思議な色合いも。
よがって喘いで、誇りを身にまとったまま射精して、ぐちゃぐちゃにしてそれでもまた突っ込んで。
もう洋服の意味をなさないぐらいしつこく攻めて、うっとおしくしながらも脱がせないまま。一体何処のガキの征服感だ。
黒い制服が型を留めたまま動く。
「我慢しなくていいですぜ、」
先ほどから罵声を発しないのはきっと薬の巡りが一周を通り越したからだろう。摺り寄せた頬を離す事もせずに、土方さんは必死に歯を食いしばって声を抑えていた。
熱い。
こめかみに口を寄せて匂いを吸い込めば、少し湿った感触がある。そのまま耳元にキスした。
「今頃きっと山崎あたりしかいないでさぁ」
「・・・・っ、」
横から眺めた横顔は乱れた髪で少し隠れていたが、元々短い黒髪の影から目元まではきちんとみれた。暴れたせいで少し上に上がったたて襟が顔をラインを邪魔していたが口元も見える。
眼をぎゅっと閉じている。いつもと同じ。声を抑える仕草。
「きっとびっくりするなぁ、鬼の副長が、同じ男に突っ込まれて、気持ちよくって射精しているなんて知ったら」
それでも何もしていない状態からは発覚できない体の変化はすぐに分かった。くっつけた背中も分厚い制服越しなのにものすごく熱い。
自分の熱さもあるけど。
「あれ、」
意地悪く落としていく声は、落着いているだろうか
それだけが気がかりだったがそのまま反応するものを握りこんだ。カチャリとベルトを外しただけで大きく体が揺れた。<BR>
「・・・・うぁ、」
「もう濡れてる」
かたくなに動かさなかった土方さんの膝がだんだんと開いてきた。その間に自分の膝を入れて押し広げる。ぎゅ、と腰を抱いてゆっくり擦った。
「・・・・っ・・・・っ・・・・ァ、」
「あれ、おかしいなぁ」
ぐっと腰を押し付けて体を揺らした。握りこんだ腕で腰も掴んで一緒に揺するように動かすと、微かだが声が漏れてきた。いつもは最後の最後まで必死で我慢する、土方さんの声。
揺らす腰に合わせて追い上げる。だんだんと、土方さんの腰も揺れているような気がして薄く笑った。
「気持ちいいの?土方さん」
もっと聞きたい。
耳元に吹きかけるように言うとビクリと体が反応する。
「っ・・・・・ン、っ・・・・・!」
大きく震えた腰を抱き寄せてごつりとした制服越しの背中に頬を乗せた。荒い呼吸と同じように上下する熱い背中。
黒いあのコートに吐き出してしまえばいいんだ。そのまま自分の黒いコートに。
「アアッ!!!」
ひときわ響くように叫んで、自分の手のひらで受け止め切れなかったものがポタリと落ちる水音が聞こえた。
もう、
・・・・・・戻れないところまで来てしまった。
また遠く、低く思う自分がいて、少しの間だけ目を閉じた。
「・・・ア、・・・ア、ア、アッ、ア、はっ、」
二本目の指を入れながら丁寧に滑った。自分も余裕がないくせに、と心のうちで思いながらじっくりと溶かしていく。普段猛烈に嫌がるこの行為は一度もまともにさせてくれた事は無かった。畳に額を押し付けている顔はもちろん見えない。けれど指を抜き差しするだけで飛び出してくる声はもう抑え切れていない。時々思い出した理性を総動員して引こうとする腰全体をがっちり両手で掴み、何度も舌を差し入れた。
ぐちゅりという生々しい音が部屋中に響いている。
「はっはっ、アッ、」
「土方さん」
何度目かの名前を口にする。その声もきっと届いてなんかいないんだろう。薬の効果は絶大だった。多分普通の人からはそうは見えないだろうが、あんな色々な意味で立派な性格を持つこの副長が自分を殺していないことと、声を少なからず発していることでもうそれは証明されている。
無意識に小刻みに揺れてる腰をなでるようにさすり、もう片方の指を思いっきり突っ込んだ。中の一点を擦るたびにビクリと反応する体をじっとみつめる。
自分は一体何がしたいのだろうか。でも何が衝動なのかは分かっている。ただ、それの表現の仕方もやり方も方法も分からないだけだ。
だけどどうしてもそういう方向に進んでしまうのは、自分の根元の方の問題なのだろうか。
暗い道を。
「アアッ、あう、ア、・・・ッ」
「土方さん」
舌と指を引き抜いてまた呼びかける。相手が答えない事を理解しても繰り返す名前を自分は好きだ。必要性のない事を許されていると勘違いしてしまう。でもそれだけでも気分は落着くしいい。
本当は、この行為自体だってものすごく好きだ。何度でもやりたい。けれどそれをなかなかさせないこの人のほうが好きだった。
そういう物事が全て過去形になってしまう。この行為の後で。
もう触れられない。触れられたとしても意味を成さない。キスをして髪に手を入れて耳元に言葉を残せない。この人が怒りながら眼を閉じる瞬間をもう見れない。
天秤にかけることが許されるなら、今からでも全力疾走で走って戻りたかった。
その後姿がたとえ自分らしくなくても。
乱暴に体勢を変え覆いかぶさるように正面に向き合うと、土方さんの眼はぎゅっと閉じられていた。荒い息を大きく吸って吐いて、うっすらと涙が滲んでいる。強い感度のせいで余韻が残る口元からは、ああ、ううという単語が小さく漏れていた。襟の形は崩れていたが、中の黒いカットベストもきちんと収まっていた。白いマフラーも少し外れかかっているだけで首元に留まっている。
ゆっくりとベルトを外し自分の物をそこにあてがう。こめかみをすうと流れて汗がぽたりと落ちた。その行方を捜すあても無いほど二人して汗をかいている。触れても土方さんは眉を寄せただけで声を堪えていた。
「土方さんはおかしい人でさァ、」
「アアッ・・・・、ウウ・・・ッ!アッ!」
「こんな風に、」
「アアッ・・・・・・・・・ッ・・・・・・・ハァッ・・・・・・」
ぐぐっと奥まで入れるまでに土方さんは二度目に達してしまった。そのキツさを表情に出ないよう眉を寄せて耐える。どうせ相手の眼は閉じられているのに。滅茶苦茶に脱ぎかけた黒いズボンはもうぐしゃぐしゃだった。唯一肌の見えるそこは汗と吐き出したもので汚れている。高い襟で隠れている首元も、顔にも汗をかいていた。
自分の額にも汗が光っている。こんな大きな男二人で、汗だくで何をやっているのだろうか。眼を細めるように見つめても土方さんは眼を開けてくれなかった。縛られた両腕を額にあてなおも眉間にしわを寄せたまま。
ねぇ土方さん。分かってる?
今まで分かってた?俺が抱いてるって分かってた?
「こんな場所に突っ込まれて」
足をわざと大きく広げてゆっくり擦り合わせた。焦らしながら浅いところを探っても土方さんの口からはひっきりなしに声が漏れてくる。
ああ、うう、ああ、と繰り返される単語と荒い息よりも、結合部から聞こえる生々しい音を大きく、わざと聞こえるように揺すり上げた。
この温かさは変わらないのだろうか。
もしも自分じゃなくても。
早くも反応し立ち上がってきた自身をぎゅうっと根元でせき止めると、土方さんはやっと眼を開けた。
その潤んだ眼が立ち会うのがたとえ、自分じゃなくても。
・・・・・・何も、変わらないのだろうか。
「あっあっあっ、アア!!はっ・・・・あっアア、」
広げた足首と太ももを乱暴に抱えるようにして腰をぶつけるようにガンガンと突っ込んだ。何処を見ているのか分からない眼が自分を映して揺れていた。ガクガクと揺すり上げながらじいと見つめる。そらしたくてもそらせない不思議な眼。欲情で視点を見失っても綺麗な黒。
見詰め合ったまま声を上げ続ける、その顔に近づいて。
キスできそうな距離で。
「・・・・・・土方さんはそんな声出すんですよね、男に突っ込まれて」
「あの銀の旦那とか、近藤さんとかに突っ込まれても、」
「・・・うああ、アウ、アアッ!!!ア、ア、ア、」
何か返される前に激しく突っ込んだ。握りこんでいた手でにるりと擦り上げるとぎゅうと締まる、そこに擦りつける。なんでだろう。こんなに喉につっかかって苦しくて気持ち悪いのに。ガラにもなくもしかしたら涙が出るかもしれないとまで思うほど、胸焼けはひどいのに。
なんでこんなに気持ちいいんだろう。
グググッと押し付けて耳元にドサクサ紛れにキスした。そのまま耳元に直接吹きかける。
土方さん。
「皆にもこんな顔するの?」
「アアアアアッ!!!」
喘ぐたびに収縮していたそこが一気に締まる。そのままの流れに任せて中に吐き出した。そのまま首元に顔をくっつけて息を吐く。自分の耳元で、まだ納まらない熱を持て余している声が漏れている。うっとおしくて脱ぎたい制服を、わざと最後まで脱がさずに夜を明かそうか。今はまだ、外がやっと暗くなった頃だ。
薬が切れるまで。中途半端な終いよりは自分達に合っているとも思う。そして、薄く笑った。
心はそれを全否定している。
まだ土方さんは、自分を殺していない。
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